コミュニティFM大分析 #32【地元のコミュニティFMの灯を繋いだ企業】
- koshibatakashi
- 2 日前
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こんにちは。「コミュニティFM大図鑑」のコシバです。
コシバが長年調査・収集した情報を分析して、目黒先生の解説と共に紹介していく「コミュニティFM大分析」。
2026年3月29日放送の「サンデー防災Open Lab.」では、地元のコミュニティFMの灯を繋いだ企業についてお送りしました。
収入が伸び悩み経営難に陥って先行きが見通せない、放送機材の更新もできない、これ以上の運営は難しいと閉局するコミュニティFMが後を絶ちません。
なかなか「350の壁」を超せないコミュニティFMではありますが、中にはもう閉局しかないという状況に待ったをかけて、救いの手を差し伸べた地元の企業もあります。そこには、まるで『プロジェクトX』のようなドラマが繰り広げられたようなところもありました。
事業継承といえば、兵庫県尼崎市のエフエムあまがさき→みんなのあま咲き放送局(FM BLOOM)が思い浮かびますが、今回は尼崎のほかにコミュニティFMの事業を受け継ぎ、地元の情報発信手段の灯を消さなかった企業の中から、私が3つ選んでみました。
■地元CATVが赤字三セクを救済
●FMじょうえつ(新潟県上越市)エフエム上越→上越ケーブルビジョン

まずは新潟県上越市にあるFMじょうえつをご紹介します。FMじょうえつは、1995年に起きた阪神・淡路大震災と「7.11水害」をきっかけに、1999年に上越市が51%、地元の企業が49%を出資する第三セクター「エフエム上越」が運営するコミュニティFMとして開局しました。
エフエム上越は市内の中心部にある雁木通りプラザの2階にあるスタジオから放送。2004年の新潟県中越地震のときには特別放送を実施し、スタッフが泊まり込みで市内の災害、避難情報を伝えました。
しかし、SNSなど情報収集手段の多様化などでラジオ離れが進み、広告収入が減少したことで経営状況が悪化。市からの年2,000万円ほどの委託金で単年度での黒字は確保していたものの、2020年3月期の決算では累積の欠損金が3,135万円にのぼり、当時の資本金5,000万円の6割以上に達していました。
上越市はエフエム上越の事業継続は厳しいとして、第三セクターでの運営を断念。地元で放送事業を行っている企業に事業の継承を打診しました。
これに手を挙げたのが、上越市でケーブルテレビ事業などを手掛ける上越ケーブルビジョン(JCV)でした。JCVはエフエム上越のスタジオ設備、そしてスタッフを丸ごと受け入れて、2021年4月からJCVの運営に移行しました。
JCVは妙高市で2015年に開局したコミュニティFM局・FMみょうこうを運営しているため、合理化のため2局の番組を統一し、雁木通りプラザのスタジオも畳んで、JCVの自社スタジオからの放送に切り替えました。
昨年、JCVは本社屋の南側に新たな情報発信拠点施設「J-pit」を建てて、その中にガラス張りのラジオスタジオ「さくらスタジオ」をオープンしました。地域に開かれた放送局として、FMじょうえつは新たな歴史を刻んでいます。
■地元の「文化」を残すために承継
●Silk FM(長崎県大村市)FMおおむら(※会社は存続)→フィーランド

続いては昨年、経営体制が一新された長崎県大村市のFMおおむら・Silk FMをご紹介します。
FMおおむらは2010年に開局。JR大村駅の改札の目の前にスタジオがあるのが特徴で、地域の情報や市議会の中継、地元にある大村ボートレース場からの実況中継など、特色ある番組を放送してきました。
しかし、経営難のため放送時間は年を追うごとに減少。2020年からは日曜日が終日放送休止になっていました。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が経営を圧迫し、創業以来社長を務めていた方も体調を崩してしまい、運営の継続が困難になりました。
当時の社長は地元の企業に事業継承を打診しました。これに応じたのは、FMおおむらのスポンサーの一つだったフィーランドという、大村市で呉服店や看板店、飲食店など幅広い事業を展開する会社でした。
2025年に株式会社FMおおむらはそのままに、フィーランドが実質的な親会社になり、社長も28歳の野島亘宇(こうう)さんに交替しました。
フィーランドの野島進吾会長は、最初FMおおむらからの申し出を断ったそうですが、フィーランドは大村で文化事業を行っている会社だという自負があり、コミュニティFMも15年かけて培った地元の文化の一つなのに、これがなくなってしまうのは勿体ないと、継承を受け入れたそうです。
継承に伴って運営体制を見直して、スタッフや番組、放送機材を一新しました。また、放送時間も増やしました。愛称もシルクのように光り輝く大村湾の水面のイメージと、「大村のまちを知る、歩く」というフレーズから「Silk FM」に変えて、新生FMおおむらのPRに努めています。
■まるでプロジェクトX!閉局予定日に承継が発表
●ナナコライブリーエフエム(埼玉県朝霞市)クローバーメディア→リゾン

最後は埼玉県朝霞市のナナコライブリーエフエムをご紹介したいと思います。ここは本当にギリギリのタイミングで事業継承が行われた、ドラマのような展開が見られました。
ナナコライブリーエフエムは2007年に「すまいるエフエム」として開局しました。同じ名前のコミュニティFMとして、朝霞市のほか志木、和光、新座の3市の地域に密着した番組を放送していました。
すまいるエフエムは2018年に、志木市でインターネットTVやイベント事業などを手掛けるクローバーメディアにコミュニティFMの事業を継承して「クローバーラジオ」になりましたが、3年目の2020年に経営不振のため9月いっぱいで停波し、閉局すると放送内で発表しました。
クローバーラジオの各番組も9月で終わるため、それぞれ最終回の挨拶があり、閉局へのカウントダウンが近づいていました。
そこに待ったをかけたのが、朝霞市で不動産事業を行っているリゾンという会社でした。リゾンの橋本岩樹社長は地域のインフラとなるラジオ局を何とか残したいという思いで、反対する役員を説得して事業を継承する決断をしました。その正式な発表があったのは、9月30日の夜。まさに閉局まであと数時間というタイミングでした。
クローバーラジオは10月から一旦休止という形を取り、その間にリゾンが設立した新会社に免許を継承する手続きをとって、翌2021年1月から「ナナコライブリーエフエム」として新たなスタートをきりました。
営業活動もリゾンが一部を担うようになって現場の負担が軽くなり、スタジオも東武朝霞台駅・JR北朝霞駅近くに移転して、機材も新しくなったため、士気は大きく上がったそうです。
橋本社長の決断が救った朝霞市のコミュニティFM。現在もナナコライブリーエフエムでは多彩な番組でリスナーを楽しませ、地域に貢献しています。
ということで、コミュニティFMの事業を受け継ぎ、地元の情報発信手段の灯を消さなかった企業を3つご紹介しました。
関係者に話を伺うと、コミュニティFMが一度閉局した自治体で再び立ち上げようとすると、継続的に運営できるかが厳しく審査されるなど、免許取得のハードルは上がるそうです。
例えば大阪府八尾市ではFMちゃおが閉局して、約1年後に八尾タイムズが運営するやおFMが開局しましたが、新規の開局になったため相当大変だったそうです。
事業継承の場合でも多くの書類を提出するなど労力は要りますが、その地でまた新たに開局するよりはハードルが低いため、可能であれば他所に継承する方が良いことになります。
今回、フィーランドの野島会長がおっしゃっていた「文化を継承する」という言葉がとても印象に残りました。地域の文化としてコミュニティFMはできる限り遺していかなければならないと思います。
ご覧頂き、ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。


















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