コミュニティFM大分析 #18【コミュニティFM運営上の悩み・アンケート結果】
- koshibatakashi
- 5 日前
- 読了時間: 9分
更新日:11 分前

こんにちは。「コミュニティFM大図鑑」のコシバです。
コシバが長年調査・収集した情報を分析して、目黒先生の解説と共に紹介していく「コミュニティFM大分析」。
2024年9月29日の「サンデー防災Open Lab~コミュニティFM大分析」では、コミュニティFM局の運営上の悩みに関するアンケートの結果をお伝えしました。
■コミュニティFM全局を対象としたアンケートについて
現在、全国には340あまりのコミュニティFM局があります。この大分析では、全国のコミュニティFMをいろいろと分析してきました。
『みんなのサンデー防災』では、その地域を詳しく知るコミュニティFM局が「災害イマジネーション」を持つことで、地域の防災・減災に繋がることを繰り返しお伝えしています。
そのためにも、コミュニティFM局は継続的に運営していかなければいけませんが、共通の課題を持っています。
私が全国のコミュニティFM局を訪れた際に、運営上の悩みをスタッフの方に伺ってみたところ、特に多かったのが「収益」「住民への認知度」「高齢化・後継者不足」の3つでした。これについては、以前の大分析でもご紹介しました。
ただ、私が話を聞けたケースはほんの一部で、詳細な状況まではわかりませんでした。そこで今回、全国のコミュニティFM局にアンケートをとって、具体的な悩みや傾向を調べてみようと思いました。
お忙しい中、回答して下さった各局の皆様には、深く感謝申し上げます。
■回答状況について
メールで調査依頼を行い、回答はgoogleフォームを使って、すべてオンラインで行いました。回答期間は2024年7月23日~8月31日の1ヵ月余りでした。
対象は開局から1年以上経ったコミュニティFM局で、そのうちメールでの連絡が可能だった321局に依頼して、そのうち72局から回答を頂きました。回答率は22.4%でした。
エリアに関して、四国を除くすべての地域から回答を頂きました。
経営形態は複数回答でお願いしましたが、一番多かったのは純民間、次いで第三セクター、NPO法人、公設民営、ケーブルテレビ事業者直営、その他という順番でした。

運営上の悩みについては「すごくある」「まあある」「ない」の3つの選択肢から選んで頂きました。
まず、収益に関する悩みですが、「すごくある」と「まあある」を合わせて9割以上(97.2%)と、ほとどの局が収益に関して悩みを持っていることがわかりました。「すごくある」だけでも6割以上(62.5%)あり、他の2つと比べて大きな比率となっています。
認知度に関しては、「すごくある」と「まあある」を合わせて約8割(80.6%)でした。収益ほどではありませんが、回答を頂いたうち5局に4局は認知度に関する悩みを持っています。
高齢化についても「すごくある」と「まあある」を合わせて8割弱(79.1%)と、認知度の比率とほぼ同じですが、「すごくある」だけ見ると4割強(40.3%)で、認知度の「すごくある」の約25%(26.4%)と比べると、より悩みが大きいことが推測されます。

■収益に関する悩みについて
今回、3つの悩みについて、自由回答の形で具体的に書いて頂きました。こちらが想定する以上に皆さんとても細かく、具体的に書いて下さって、悩みの大きさを感じました。
他の局の方々も「あるある」と共感して下さるかもしれませんので、いくつか抜粋してご紹介したいと思います。
まず、一番皆さんが悩まれている収益についてです。
(すごくある)
弊社は開局当初から自治体からの委託金で経営する第3セクターですが、小さな町で広告収入にも限界があり、年々委託金も減額されているため今後どうやって運営していくのかが課題。
(収入が)市からの割合が大きいので、市からの委託がなくなると危機的状況になる。
インターネット広告の台頭で、多くのラジオ局がお付き合い出稿の割合が増えているかと思う。また、ネット広告の低価格を持ち出されると負けてしまう為、必然的広告出稿が減っているのが実情です。
コロナ禍で出稿数が20%程度減少して回復しない。
広告業界においてCFMの存在感は非常に希薄になっている。広告の選択肢に入ってないとすら思える。これは単局だけでなく、業界団体で取り組むべき問題。スマホからの課金を上手に使ったコンテンツ販売など新しい収入源の開発が喫緊の課題。
悩みというより経営ですので日々考えトライ・アンド・エラーを繰り返しています。ただ開局から20年も経つと、多くの局が直面している課題は、市場縮小・少子高齢化・事業承継や廃業などによるスポンサー減少と、多額の費用がかかる放送設備更新ではないでしょうか。
(まあある)
地域のスポンサーの皆様にはある程度支えられていますが、将来を考えるといつまで応援していただけるか、また、新しいスポンサーとして支えていただける会社が増えない。また、エリア内の自治体の支援がほとんどない状態です。
少人数運営なので放送業務に労力をとられプロパー職員が営業活動に時間を捻出するのが大変だった。しかしながら、開局以降年月を経てコンテンツ的に成立する放送ボランティアの数も増え、同時に緊急災害時や営業支援等の手助けをしてくれる団体(個人)も確実に育ちつつあるのが現状である。
運営管理費の一部を代表独自の事業を法人名義で行い収支調整をしている。広告収入については「CATVのCMとセット売り」をメインにしているため営業実績に左右される。取引上、インボイス制度を導入したため支出増。
(ない)
1人経営なので利益が出ている、CMが無くても経営出来る体制を整えた。
■認知度に関する悩みについて
次は認知度に関する悩みです。
(すごくある)
知ってもらうためには時間とお金が必要だと、開局6年してから気づきました。
存在は周知されて来ているが、接触率が低い。放送でカバー出来ないエリアがある。
若年層への浸透度の低さ。
開局から23年になるのに、開局当初のリスナーが離れ、新たな営業努力をしなかったために浸透度が減っている。
(まあある)
聴取データが取得できないため媒体力が測れない。測れたとしても弱いと予想される。
東日本大震災時は地域のメディアとして情報を伝え、かなりの市民がラジオを聴取したが、時間が経過し、ラジオを持っていない方も多く、サイマル放送など新たな発信方法を試している状況です。
ラジオの聴取場所として車内があるが、最近は子どもに動画を見せてしまうことが増えてきているようで、車でもラジオ離れが進んでいると感じている。
知っているだけ で良いのか?
(ない)
市民参加型ラジオとして開局し当初は「素人放送」と言われ順調にリスナーを獲得できたわけではない。間もなく30年を迎えるが、放送ワークショップ的な事業を地道に継続してきたことで「聴くに堪えうる」番組が安定的に編成できるようになってきている。
■高齢化・後継者に関する悩みについて
そして、高齢化・後継者についてです。
(すごくある)
市民パーソナリティが全体的に高齢化し、いつやめられるか不安。高齢化してきた局員の後継者も見つかるのか不安。
放送部門はパーソナリティ・番組制作者の継続した確保が難しい、技術部門は現場作業・知識理論のノウハウ伝承に数年単位の時間がかかる。
70代を超えるパーソナリティの番組をどうするか。リスナーの新たな開拓をしなければならないが、若い人の話題に追いつけず番組がマンネリ化している。
給与水準が低く、スタッフの想いに頼っている部分が強い。いずれ次の世代に代わる時にはその想いの部分はなかなか通用せず、条件改善もままならない中、悩ましい状況が続く。
地元での若者の就職率が低く、若い世代の取り合いになっているなかで、ラジオ局が魅力ある業界だと思われていない。
ラジオの運営側に携わりたいという人材との出会いが少ないことが悩みのひとつです。
現在のスタッフで仕事がまわっているように見えているのか経営者に切実な危機感がない。
(まあある)
現在のメンバーは40代が多いのですが空きがないと若いメンバーを入れることができない。
コミュニティ放送局で働くことがイメージしてもらえず、ラジオ局で働きたいという人が来るミスマッチングの悩み。
弊社ではないが、他の放送局ではスタッフの高齢化が進み、技術者がいない局を知っている。電波法に明るい方も少なくなってきている中、法令だけはどんどん整備が進んで提出物も多くなる中で後継者が見つかるか疑問である。
(ない)
ないと回答した局の中で、詳細を書かれたところはありませんでした。
■その他運営上に関する悩みについて
今回のアンケートでは、収益、認知度、高齢化以外で悩んでいることについても、自由回答で記入して頂く欄を設けましたが、皆さんアンケートにぶつけるかのように思いがたくさん書かれていました。少しですが、ご紹介したいと思います。
大きな放送局(県域)にスタッフを引き抜かれるのは、非常に厳しい。かといって、誘いがあれば本人は挑戦したいというのも仕方ない。人材の取り合いというのは厳しいと思う。
開局当初に聞こえていた地域にビルなどが建った結果、難聴地域が増えている。新しいアンテナを立てる余裕はない。
ブランドを生かして放送収入以外の売り上げをどう立てていくかも課題と捉えています。
在所の自治体が防災に対する優先順位が低く、開局当初から委託や大きな支援を受けていない。関係性が薄い。
日々の業務に追われ、中長期的な運営計画(経営計画)になかなか取り組めない。また、現状の経営改善に取り組めていない。
内外全ての施策において常に気が抜けない薄氷を踏む思いの運営がきつい。
ヒト・カネ・モノすべてにおいて、業務上の責任が高いわりに補助などを受けにくかったり知名的身分が低い等という様々なマイナス点が多い。これらの点で今後の業界的に不安がある。
■回答の公開について
今回のアンケートは、番組の中だけでご紹介する予定でいました。しかし、アンケートの中で「集計結果をご覧になることを希望するか」を尋ねたところ、大半の局が結果をご覧になることを希望されました。そのため、ご希望があった局の皆様には結果をお送りいたしました。
今回のアンケートで、多くの局がコミュニティFM局を運営する上で悩みを抱えていることが改めてわかりました。この悩みを皆さんで共有するとともに、今度は「うちではこんなことをやっていますよ」という取り組みをご紹介して、コミュニティFM全体の収益や認知度、そして高齢化の問題を改善する方向に進めていきたいと考えています。
ご覧頂き、ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
コメント